一般の方向け情報

  • Print this Page

BRCAssure® (ビーアールシーエーシュアー)

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群 (HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer)の 原因となるBRCA遺伝子の変化について、 血液を採取して調べる検査です。

BRCAssure®を受ける前には、必ず医師にご相談の上、
遺伝カウンセリングを受けてください。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群について

2011年の統計によると、日本では、1年間に約7万2,000人が「乳がん」、約9,300人が「卵巣がん」と診断されています1
BRCA1、BRCA2と呼ばれる2つの遺伝子(以下、BRCA遺伝子)は乳がん・卵巣がんの発症に深く関わっていると考えられています。どちらも誰もがもっている一般的な遺伝子ですが、この遺伝子に生まれつき変化があると、乳がんや卵巣がん、そのほかの特定のがん(前立腺がん、すい臓がん、男性乳がん)になるリスクが変化のない人よりも高くなることがわかっています。2, 3, 4
BRCA遺伝子の変化は家族が共有していることがあります。この遺伝子の変化によって起きると考えられるがんを、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer、以下HBOC)と呼びます。

BRCA遺伝子と遺伝について

BRCA遺伝子には、環境要因(紫外線、喫煙、飲酒などの生活習慣)や加齢などによって傷ついたDNAを修復するたんぱく質を作る役割があります。BRCA遺伝子に生まれつき変化があると、修復たんぱく質をうまく作れず、DNAのダメージが修復されないことがあります。
その結果、乳がんなど特定のがん(3ページ参照)の原因となるDNAダメージが細胞に蓄積し、がん化しやすいと考えられています。

BRCA遺伝子の生まれつきの変化は、性別に関わらず、それぞれ50%(2分の1)の確率で親から子へと伝わり、親兄弟と共有しています。5

BRCA遺伝子の変化とがん発症リスク

生まれつきBRCA遺伝子に変化がある方のがん発症リスクとして以下のような報告があります。

BRCA遺伝子の変化によるがん発症リスク
がんの種類 遺伝子に
変化なし
BRCA1遺伝子に
変化あり
BRCA2遺伝子に
変化あり
乳がん 12% 60%以上 60%以上
卵巣がん 1-2% 39-58% 13-29%
男性乳がん 0.1% 0.2-1.2%
(70歳までに)
1.8-7.1%
(70歳までに)
前立腺がん 6%
(69才まで)
7-26% 19-61%
膵がん 0.5% 5%以上 5-10%以上

(欧米のデータに基づく)2

検査について

検査の目的

BRCAssure®は、BRCA遺伝子に生まれつきの変化をもっているかを調べる検査です。遺伝子の変化に関する情報を知ることで、主治医や遺伝の専門家(臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー)があなたや家族にとって必要な検診や検査を考慮したり、がんになるリスクを減らすための治療法や予防策を考えることができます。

検査の対象となる方

臨床症状やご家族の既往歴から、HBOCの可能性が高い方、血縁者に乳がんや卵巣がんなど特定のがんが多くみられる方に推奨されます(4ページを参照ください)。
※本検査は通常、未成年者には推奨されません。2.6

検査の方法

本検査は採血のみで行われます。採取した血液からDNAを抽出し、BRCA遺伝子の変化を調べます。

所要日数

発端者様向け検査: 約3週間 
血縁者様向け検査: 4~5週間

BRCA遺伝子の検査が考慮される方

下記の項目に1つでも当てはまる方は医師にご相談ください。

① ご本人や血縁者に40歳未満で乳がんを発症した方がいますか?

② 年齢を問わずご本人や血縁者に卵巣がん(卵管がん、腹膜がん含む)の方がいますか?

③ ご本人や血縁者に原発乳がん(転移、再発ではない)を2個以上発症した方はいますか?

④ ご本人や血縁者に男性乳がんを発症された方がいますか?

⑤ ご本人や血縁者を含め、乳がんを発症された方が3名以上いますか?

⑥ ご本人や血縁者に、乳がんと診断された方でトリプルネガティブの乳がんといわれた方がいますか?

⑦ ご本人や血縁者に前立腺がんやすい臓がんになられた方はいますか?

⑧ 血縁者の中にBRCA遺伝子の変化が確認されている方がいますか?

米国NCCN(全米総合がんセンターネットワーク National Comprehensive Cancer Network)6 ACOG(米国産婦人科学会 American College of Obstetricians and Gynecologists)7 日本HBOCコンソーシアム8

HBOC家系の例

検査結果の報告の仕方

3つの結果(「Negative」、「Positive」、「VUS」に大別)で報告されます。結果に関わらず、医師や遺伝の専門家(臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー)と話し合い、適切なフォローアップを受けるようにしてください。

それぞれの結果について
Negative

現在の検査技術では調べきれない変化がある可能性はありますが、BRCA遺伝子にがんに関わる変化を持っている可能性はほぼないことを意味します。しかしBRCA遺伝子に変化がなくても、乳がんや卵巣がんを発症している人は多くいます。一般的ながんのリスクは残るため、一般的ながん検診が必要です。

Positive

BRCA遺伝子にがんに関わる変化があり、一般の方よりも乳がんや卵巣がんになるリスクが高いと考えられます。すでにあなたが乳がんを発症している場合、BRCA遺伝子の変化による影響が考えられます。再発を防ぐため、今後の健康管理について医師や遺伝の専門家と話し合ってください。ただし変化があるからといって、必ずがんになるということではありません。
血縁者も同じBRCA遺伝子の変化をもっている可能性があります。ご家族のBRCA遺伝子検査の必要性について医師や遺伝の専門家と話し合うことをお勧めします。

VUS

BRCA遺伝子に変化が検出されましたが、現時点ではがんの発症に関わる可能性が明確ではない変化であったことを意味します。研究により今後、がんの発症との関連が明らかにされる可能性があります。今後の調査報告や健康管理について医師や遺伝の専門家とよく話し合ってください。

検査後の健康管理

がんに関わる変化があるとわかった場合、発症の予防や早期発見、治療法の検討といった健康管理が必要です。
次の項目について、医師と相談してください。

  • 適切ながん検診を受ける
  • 予防的外科手術の必要性の検討
  • 化学療法の選択
  • 血縁者のリスクについての検討

検診や治療に関する詳細は以下のホームページで
閲覧することができます。

参考文献

1) 国立がん研究センター がん対策情報センター(2011)
  http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

2) Petrucelli, N, et al. BRCA1 and BRCA2 Hereditary Breast and Ovarian Cancer. Gene Reviews.
  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1247

3) BRCA1. Genetics Home Reference. http://ghr.nlm.nih.gov/gene/BRCA1

4) BRCA2. Genetics Home Reference. http://ghr.nlm.nih.gov/gene/BRCA2

5) Hereditary Breast and Ovarian Cancer. Cancer.net.
  http://www.cancer.net/cancer-types/hereditary-breast-and-ovarian-cancer

6) Hereditary Breast and/or Ovarian Cancer Syndrome. NCCN Guidelines Version(2013)
  http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/genetics_screening.pdf

7) Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome.
  ACOG Practice Bulletin, Number 103, April 2009; reaffirmed 2013. 
  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19305347

8) 日本HBOCコンソーシアム
  http://www.hboc.jp/downloads/kantancheck.pdf

一般の方用資料