本検査は、超音波によるNT測定に関する米国もしくは英国での資格(FMFまたはNTQR)を有する医師から受託いたします。詳しくは弊社までお問い合わせください。
検査の目的
FirstScreen®(ファーストスクリーン)は、胎児が対象の疾患に罹患している確率を算出するスクリーニング検査です。確定診断である絨毛検査や羊水検査による染色体分析の必要性がどの程度かを判断する材料の一つとなります。
FirstScreen®は妊婦さん一人ひとりの確率を算出します。さらに、基準となる確率(カットオフ値)より高い場合はスクリーニング陽性、低い場合はスクリーニング陰性と報告されます。
FirstScreen®を受ける前には、医師にご相談の上、遺伝カウンセリングを受けてください。
検査を受ける時期について
FirstScreen®は妊娠第1三半期*に行うことが可能です**。従来の妊娠第2三半期に行うスクリーニング検査(クアトロテスト®など)に比べて、より早い時期にご自身の確率を知ることが出来ます。
* 欧米では妊娠14週、妊娠28週を境に妊娠期間を第1三半期(First Trimester)、第2三半期(Second Trimester)、第3三半期(Third Trimester)に分類しています。6ページ目の表もご参照下さい。
** 実際には超音波検査でCRL(Crown Rump Length : 胎児頭殿長)が39~84mmの時期のみ検査を受けることができます。このCRLは、おおむね妊娠11週から14週になりますが、検査を受けることができるかどうかはCRLの値が指標となります。所要日数
所要日数は約10日です。
対象となる疾患
ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミーです。
※双胎妊娠の場合、結果報告に制限があります。ダウン症候群の推定確率のみが報告され、18トリソミーの確率を報告することはできません。
※妊娠前からインスリンまたは経口治療薬を必要とする糖尿病の場合、単胎の場合でも18トリソミーの確率を報告することはできません。ダウン症候群とは1
ダウン症候群は、主に21番目の染色体が3本あることにより生じます。知的発達や運動能力の発達に遅れが見られます。病気にかかりやすく、心臓や内臓の病気を合併する可能性が高くなることが知られています。これらの合併症は治療が可能です。出生後、合併症を早期に見つけ、適切な治療を行うことが重要です。家族の積極的な関わりや専門家によるサポートのもとで早期からの療育や、特別に配慮された教育により、成人して社会生活を営むことも可能になりつつあります。
18トリソミーとは2
18トリソミーは、18番目の染色体が3本あることにより生じます。多くの場合、主に心臓の形に変化が見られ、胎児がお腹にいる時期から目立った発達の遅れがあります。知的発達の障害は重度とされます。最近では、積極的な治療などで5~10歳ごろまでゆっくり発育・発達される方もいます。
* 開放性神経管奇形はFirstScreen®の対象疾患に含まれておりません。開放性神経管奇形は妊娠15週以降に行われるクアトロテスト®やMS-AFP、超音波検査で調べることが出来ます。
検査の方法
妊婦さんから血液を採取し、血液中のPAPP-AとhCGという成分を測定します。これらは妊娠中に胎児または胎盤で作られる成分です。
これら2つの成分の値は、妊娠が進むにつれて増減しますが、胎児が対象疾患であるかどうかも影響します。
FirstScreen®は2つの成分の値と超音波検査によるNT(Nuchal Translucency: 胎児後頸部浮腫)測定の結果、および下の図のような因子を用いて、胎児がそれぞれの疾患であるかどうかについて、妊婦さん一人ひとりの確率を算出します。妊婦さんの年齢が高くなるほど、ダウン症候群や18トリソミーの赤ちゃんが生まれる頻度が高くなります。1
* FirstScreen®で測定を行う血液中の成分やNTは、日本人集団の基準値と比較して確率算出に用いられます。
NTとは
NTとは胎児の首の後ろに見える“むくみ”のことを言い、軽度なものも含めると多くの胎児に存在します。ただし、むくみが大きいと胎児がダウン症候群や18トリソミーなどである可能性が高くなることが知られています。3
検査結果の報告の仕方
妊婦さん一人ひとりの確率が「1/500」のように報告されます。それぞれの疾患ついて、基準となる確率(カットオフ値)が定められています。カットオフ値と検査を受けた妊婦さんの確率を比較し、カットオフ値よりも高い場合はScreen Positive(スクリーニング陽性)、低い場合にはScreen Negative(スクリーニング陰性)と報告します。ただし、FirstScreen®は確定診断ではなくスクリーニング検査ですので、次のように解釈します。
確率について
確率が1/500であれば、「同じ1/500(0.2%)の結果を得た妊婦さんが500人いたとすると、その中の1人(0.2%)が対象疾患の赤ちゃんを妊娠している可能性があります。残りの499人(99.8%)の妊婦さんの胎児は対象疾患ではありません」と解釈します。
Screen Positive(スクリーニング陽性)とは
「胎児が対象疾患である確率はカットオフ値より高いが、生まれる赤ちゃんが必ず対象疾患に罹患しているということではない」と解釈します。
Screen Negative(スクリーニング陰性)とは
「胎児が対象疾患である確率はカットオフ値より低いが、対象疾患に罹患した赤ちゃんが絶対に生まれないということではない」と解釈します。
* 双胎妊娠の場合、18トリソミーの結果はでません。
FirstScreen®後の検査
報告された確率を確認した後に、胎児が対象疾患であるかどうかについて、より正確な情報を得るための検査があります。染色体分析と呼ばれる以下の検査は実施可能な施設が限られますので、事前に担当医や専門医にご相談ください。
染色体分析について
FirstScreen®の対象疾患であるダウン症候群と18トリソミーは、絨毛染色体分析もしくは羊水染色体分析が確定診断となります。絨毛や羊水には胎児の細胞が含まれており、この細胞の染色体を観察し、胎児の染色体に変化「染色体異常」があるかどうかを調べます。染色体分析によって、ダウン症候群や18トリソミー以外の染色体異常がみつかる可能性もあります。
絨毛染色体分析
絨毛染色体分析は胎盤から絨毛を採取する方法(CVS: Chorionic Villi Sampling)によって得られた、胎児細胞を用いる染色体分析です。CVSは妊娠10週から12週頃に行われます。CVSは、妊婦さんの腹部に細い針(穿せん刺し針)を刺すか、もしくは妊婦さんの膣内に細いストローのような管を挿入して、絨毛の一部を吸引するため、穿刺後に最終的に流産や胎児死亡に至ることもあります。
羊水染色体分析
羊水染色体分析は羊水穿刺により羊水を採取して得られた、胎児細胞を用いる染色体分析です。羊水穿刺は、多くの施設では、羊水量が増える妊娠15~16週以降に行われます。羊水穿刺は、妊婦さんの腹部に細い針(穿刺針)を刺して行うため、穿刺後に最終的に流産や胎児死亡に至ることもあります。
出生前検査タイムスケジュール表
①FirstScreen®によってご自身の確率を確認した後に、絨毛染色体分析を受けるかどうか考えることが可能です。
②FirstScreen®によってご自身の確率を確認した後に、妊娠15週以降に羊水染色体分析を受けるかどうか考えることが可能です。
③妊娠15週以降にクアトロテスト®によってご自身の確率を確認した後に、羊水染色体分析を受けるかどうか考えることが可能です。それぞれの検査の前後には、必ず医師にご相談の上、遺伝カウンセリングを受けて下さい。
参考文献
1)MedlinePlus, Health Topics, Down syndrome.
(http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/downsyndrome.html)2) MedlinePlus, Medical Encyclopedia, Trisomy 18.
(http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/ency/article/001661.htm)3) American College of Obstetricians and Gynecologists.
Screening for chromosomal abnormalities. Committee Opinion 77, Jan 2007.一般の方用資料